2018.7月 夏の土用の邪 文字起こし 竹下:えっと、最初の座学のテーマの説明になるんですが、本日は『二つの補瀉法「営衛の手法と陰陽調和の手法」の違いとその使い方について』です。以前、学術の方でアンケートなどを基に話し合ったのですが、先月の例会では、営衛の手法と陰陽調和の手法という二つの手法に対して、混乱されている方がおられると言う風に感じたので、今回、このようなテーマに致しました。会の皆様が二つの手法の違いを理解し、臨床で使いこなせるように今回のテーマを計画を企画しました。これは来年の大阪の夏期研全体に、大きく影響することになりますので、今回、このテーマに沿ってお話を聞いて、また理解を深めていただければと思います。それでは座学の方を開始したいと思います。森本先生がテーマに沿った講義をしていただきますので、講師兼座長と言う形で、森本先生、宜しくお願いいたします。 森本:えっと、では始めましょうか。ではよろしくお願いします。営衛の手法って言うのは皆さん、大分、分かっておられると。これ、営衛の手法って言うのは、僕が20年くらい、20年以上前ですか書きました。僕が書いたんですよ。これ、何で書いたかと言うことなんですけど、その辺りを皆さん、多少歴史を知っておられると、まあためになるかなと思ってその話を多少しますけど。漢方鍼医会って言うのは東洋はり医学会から分かれたんですけど、その分かれた時は難経と言うものをベースに、勉強し始めたのです。所がですね、それと同時並行として池田政一先生を、言ってみれば顧問になっていただいてですね、その池田政一先生の本を勉強したのです。そうしたらですね、そこに色々矛盾が生じてきたんですよ。どう言う矛盾かと言いますと、理屈は分かった。理屈は分かったけれど、じゃあどう言うように鍼をしたら治療に活かせるんだ、と言うようなことが分からない。鍼が進まないという嘆きがあったんですよね。どこの組織とは申しませんけどね。で、僕はそんなに難しいものかなと思ったんですけど、やはりその理論があって、治療法があってこそ臨床に使えると言うことになりますよね。そう言うことで書いたのが、営衛の手法です。まあ、21〜22年前ですかね。まあ古い話は、山崎先生にお聞きしたら分かるかもしれませんけれど、そのくらいかな? 山崎:1991年6月です。 森本:はははは。20年切ってた?2018年やからね、来年が20年になるんですか。とにかく、そんな感じです。その時に中々良い手法だ、と。良い方法だ、と言うことで1千万の値打ちがある、と言った人もおりましたし、今から5年10年くらい前には1億円の値打ちがあると言った人もおったんですけど、私の所には1つもお金は来ませんでしたけどね。とにかくそういうことで、営衛の手法を書きました。これはですね、丁度勉強してたものに当てはまると言うことで、皆さんが飛び付かれたんだろう、と思います。で、鍼が進むようになったと言うことになったと思います。それでですね、去年あたりから今度は「陰陽調和の手法」って言うものが出てきました。出てきた経緯はあるんですよね。これは名古屋漢方が、何か夏期研の目玉にするものが欲しい、と言うことで、もう、今はいらっしゃいませんけれど、名古屋漢方に原田先生と言う方がいらっしゃって、その先生が難経をよく研究、難経に限らず古典をよく研究しておられるんですけど、その先生の言ってみれば研究を、名古屋漢方の研究として出されたのが「陰陽調和の手法」と言うことなんですね。で、僕がねこのそれをこの間、形にしたのが僕が書いたものですね。今回も載せていますけど、そういうものなのです。で、これの使い方はある程度分けた方が良いと言うことなんですよね。で、どう言うように分けたら良いのかと言うことで、そこのプリントの5の所に、11項目、一応、僕が思いつくことを並べておきました。これが絶対的なものではないんですけど、その辺りまで皆さんが分かっておられたら、使い方は自ずから分かるはずです。一応、そこをざっと読んでもらいましょうか。 竹下:5、読みます。5、二つの補瀉法「営衛の手法と陰陽調和の手法」の違いとその使い方について。1.「営衛の手法」は、経絡の流注を基本に行います。「陰陽調和の手法」は、穴所の反応[内外と虚実]を基本に行います。 森本:はい、これちょっと説明しておきますね。どうしてこう言う、陰陽調和の手法を書かなければならなかったかということがあるんですけど、前にも書いていますから、覚えておられる方はいらっしゃるかも知れませんけど、経絡と言うものの流れが、僕たちは「環の端無きが如し」という言葉を、多分知っている人は多いと思いますけれど、ぐるっと回っているものだと思っていたんですね。最初は肺経ですか。最後は胆経ですか。肝経?胆経? 本田:肝経です。 森本:肝経ですか。それからまた肺経に来るんですか。と言うね、要するに端無きが如しと。要するにぐるっと回っているものだと思っていたんです。一筆書きで書けるものだと思っていたらね、どうも違う説もあるんではないかと。それが求心説と。要するに、手足から全部どう言うんですか、頭やら胴体に行っているんちゃうかという説ですね。これは馬王堆(まおうたい)ですか。何かそういうものにも残っていると言う話なんですけどね。それともう一つ、どう言うんですかね。循環説、さっき言いました「端無きが如し」って言うのは循環説なんですけど、循環説にも求心説にも、要するに値しないと言うか、値しないと言うのはおかしいですね。要するにそれ以外の流れがあるんではないのか、と言うようなことでですね、じゃあ流れを気にしなくて、結果として流れれば良い、と言う考えもできるわけです。そうすれば、わざわざ流れを先に重視するんじゃなくて、結果として流れるようになれば良い、と言うことで、ツボを治療することでいけるんじゃないかと、言うようなことですね。それが陰陽の手法になる訳です。はい、次2番目をお願いします。 竹下:2「営衛の手法」は、難経七十二難などの迎随の補瀉が基本になります。「陰陽調和の手法」は、難経七十難の後段の手法などが基本になります。 森本:はい、まあ似たようなさっきの1と似ているような話なんですけど、一応、迎随、要するに経の流れに随うのが補法で、それから逆らうのが瀉法であると言うようなやり方がありますよね。それが迎隋の補瀉なんですけれど、そういうものを気にするということがある訳ですよね。これは営衛の手法はそういうものでなっています。それから陰陽調和の手法は、要するに縦の関係ですから、流れはあまり関係ないと言うことになります。はい3番目。 竹下:3「営衛の手法」は、難経七十六難の補法が基本になります。「陰陽調和の手法」は、難経七十難や七十八難の補瀉法が基本になります。 森本:ここで分かることはですね、結果論か、それから手法論かと言う所が違うんですね。だから補法をしても、結果として瀉になれば良いと言う考え方もある訳です。ところが、術式として補法をしたら補に補われて、瀉法をしたら瀉されてと言うような事になる場合もある訳ですよね。営衛の手法と言うのは補法を中心に考えて、瀉の手法です。結果として瀉法になる場合もあるんですよね。それはその後に書いているかもしれませんけど。はい、次。 竹下:4「営衛の手法」は、寫法(移す寫の方です)が基本になります。「陰陽調和の手法」は、瀉法(捨てる瀉法ですね)が基本になります。 森本:はい、ここですね。要するにですね、精気を漏らすことに対して、非常に恐怖感を感じていた時代があるんですよね。曲直瀬道三の時代からこっち、曲直瀬道三、知っていますか?会ったことはないけどね、わしも。いつごろかな、豊臣秀吉の前くらいですか、本田先生。 本田:はい。 森本:何かその辺りなんですよ。その頃の人なんですね。その人が要するに物事を、要するに精気の虚って言うのを大事にしようじゃないか、と言うようなことで、ドンドンドンドン薬方もそういう方向になり、と言うようなことだったんですね。その後、吉益東洞なんかが出てきて「そんなもん、瀉法してガンガン治せ」みたいなね話もあったりして、物事って必ず右に寄ると左に寄るんですよね。で、左に寄るとまた右に戻るんですね。という歴史的なものがあるんですけれど、そう言うことを漢方鍼医会何かでも結構言ったんですよ。やっぱり補法が大事だ、補法が大事だと。で、補法が大事だったら、結果は瀉法になるような方法はないかいな、と見たら難経の七十六難にそう言うことが書いてあったんで、「ああ、これはそいう言う風に書こうかな」と言うことでやったんです。それで移すと言うのはね、非常にそのどう言うんですかね、ものを抜くんじゃないから、何か丸く収まるようなイメージありますよね。だから攻撃的ではないと言うことで、非常に薬方にも合うと言うことで、七十六難のその利用した営衛の手法が、1千万か1億の値打ちになったんでしょうね。はい、次。 竹下:5「営衛の手法」は、難経七十六難の衛気と営気が基本になります。「陰陽調和の手法」は、難経七十難の陰気と陽気が基本になります。 森本:はい、あの、物事ってほとんどね似たような話なんですけど、結局、衛気と営気を動かすことによって、気血津液が循環すると言うのが、まあ美しい論理だったんでしょうね。僕が自分で書いてそう言ってるんですから変ですけどね。そういうもので、皆が要するにね臨床に使いだしたと言うことなんですね。陰陽調和の手法って言うのは、ツボのバランスを調和することによって、そこの流れがぐっと良くなると言うことなんですけど、結果的には同じ事がほとんど起きるんですけどね。はい次。 竹下:6「営衛の手法」は、難経七十一難や七十六難の衛分や営分の論が基本になります。「陰陽調和の手法」は、難経七十難の陰分や陽分の論が基本になります。 森本:はい、あの言葉が違うだけでと言う事もある意味言えるんですけど、ベースが一応違うと言うことでここに出しておきます。はい次。 竹下:7「営衛の手法」は、用鍼を斜めに刺入する事が基本になります。「陰陽調和の手法」は、用鍼を垂直に刺入する事が基本になります。 森本:これは術式の問題ですけど、要するに流れを気にするということは、当然流れに、どう言うんですか、随おう逆らおうと言うことになりますから、当然、用鍼は斜めに持って行きますよね。と言うことで、営衛の手法は斜め。それから陰陽調和の手法って言うのは、陰陽を調和させれば良いわけですから、斜めなんかは全然必要ないわけです。垂直で十分と。はい、次。 竹下:8「営衛の手法」は、精気[正気]を漏らさず補す事が基本になります。「陰陽調和の手法」は、正気[精気]を漏らさず邪気を瀉す事が基本になります。[せいき]は、営衛の手法の方は精ですね。コメヘンに青いの精気。陰陽調和の手法は正しい気の正気です。 森本:はい、要するにですね、先ほどの曲直瀬道三を引き合いに出しましたけれど、要するに精気の虚と言うものが病気なんだ、と。病気の始まりなんだと言うような、精気側の考察はできる訳ですから、そいう言う考え方もあっても良いですね。でも病気は邪正抗争だったら、邪と正を何とかすると言う考え方もあるし、病気はほとんど邪を取ったらいけるで、という考え方もできるわけですよね。その三段階が頭に入っておられたら、相当この面は理解できると思いますけどね。はい、次行きましょう。 竹下:9「営衛の手法」は、経絡循環説が基本になります。「陰陽調和の手法」は、全ての流れ方に対応する事が基本になります。 森本:はい、これは先ほど言いましたからね、はい、次。 竹下:10「営衛の手法」は、体内が基本になります。「陰陽調和の手法」は、体内プラス体外[季節や宇宙]が基本になります。 森本:はい、これが大きく違う所かもしれませんね。だから季節との考え方もできるのが陰陽調和の手法に使えると言うことなんですよね。営衛の手法って言うのは、先ほど言いましたけれど、気血津液論とか寒熱論とか、要するに傷寒論系の考え方ですね。薬方に繋がるような考え方が、どうしても大きいと思います。ですから、中医学なんかでもそう言う考え方が、多分、きついんじゃないかなと思いますけれど。まあ、体内だけで勝負すると言う考え方もありますけれど、実際には皆さん、最近、去年くらいから季節の治療を勉強されていると言うことは、やはり人間と言うのは宇宙の影響力を受けながら生きているんだな、と言う事を、分かってこられたら、どういうんですか、季節なんかも受け入れる。と言うことは、体外も受け入れられると。大概にせいよと言う世界もありますけどね。はい次。 竹下:11「営衛の手法」は、気血津液論や寒熱論を基本に書きました。「陰陽調和の手法」は、精気論や邪正論や邪論を基本に書きました。 森本:これは僕が書いたからこういう風にしました。実際にそれが必要だったから、書いただけのことです。やはりね、自分がどの論を勉強しているかと言うことで、どの論を基本に患者さんを診断したかと言うことで、次、手法も当然その論に合うような手法ををした方が良いと言うことで、一応、分かりやすいように書きました。と言うことです。最後の「おわりに」をちょっと読んどいてもらえますか。 竹下:6「終わりに」補瀉法や補瀉論ですが、実際には色々な側面を持っています。例えば難経七十六難のように、手技としては補法であるにも関わらず、結果は邪が瀉されているとか、難経六十九難や七十九難のように補法を行っても、ツボの性格上その結果は瀉法を行ったと同じ効果になるとか、同じツボでも補瀉手技の違いによって結果も違ってくると言う様な事です。この辺りを十分に熟知する事で、これらの補瀉法も一段と臨床に生かされるものと考えています。 森本:ここは皆さんに一番聞いて欲しかった部分です。ですから、やはりそのどういうんですかね、陰陽調和の手法でも営衛の手法でも良いんですけれど、自分は何を目標にどう言う手法をしているかと言うことを、ちゃんと明確にするということが、こう言う勉強会なんかでも大切ですし、それから自分の臨床室でも、要するに適当にやって、何か治ったからええやないかと、それだけではストレスになりますよね、多分。臨床家としては多分ストレスをドンドン溜めていくことになると思います。やはり、脳みその中がねどう言うんですか、すっきりとするような、そのために要するに診断と治療法が合うようなことをね、そう言う所の整合性ですか。そういうものを取っていっていただきたいなと言うことで、こう言うものを書いてみました。もう、15分過ぎた? 竹下:はい、はい過ぎました。 森本:と言うことでですね、僕のどう言うんですかね、説明と言いますか、前振れ、前振りは終わりましてですね、今からここにパネラーがいらっしゃいます。ちょっと紹介してもらえますか。竹下先生。 竹下:はい、パネラーの先生の紹介を致します。今回パネラーに選ばれた先生が中垣先生、中村先生、中本先生、本田先生、山本先生の5名です。 森本:はい、ではですね、この先生と僕とでですね色々なこの営衛の手法と陰陽調和の手法の件について、お話をしていきたいと思います。あの、頓珍漢なことも言ってもらった方が、どう言うんですかね、それに対してまたどう言うように説明すれば、理解してもらえるかと言うような事がね、分かると思いますので、ドンドン頓珍漢な発言をしてもらったり、それからちゃんとまとめるような話をしてもらったりと言うような感じで行きたいと思います。では始めますよ。良いですか。 本田:お願いします。 森本:ではよろしく。 本田:お願いします。 森本:えっとですね、根本的な話から、そもそも論みたいな話をちょっと、皆さん、どう言う認識を持っておられるのかお聞きしたいんですけれど、補瀉って何なんでしょうね、補瀉って。誰からいきましょうか。本田先生から行きますか。 本田:はい。本田です。補瀉って何なんですかって言う話ですね。僕が考えている補瀉って言うのはですね、森本先生がここに書かれている通り、精気が足らなかったら補うことが補で、瀉すことが邪気を瀉すことなんですけど、その両方は最終的に精気を回復させるためのもの、手技だと考えています。 森本:はい、どうもありがとうございます。中本先生 中本:はい。 森本:じゃあ、その中本先生なんかは臨床ではどんな事をやっていらっしゃいますか。その補瀉に関してですね。まず診断と言うものは何の論を使って、診断されるんでしょう。中本先生。 中本:診断ですか。えっと少し前、四十九難を使ってですね診断していました。今でしたら季節の影響と言うものを考えてですね、今、夏ですから心や心包に邪がある。夏の影響があると言う風に考えていって、そこの実を確認してですね、それを瀉していくと言うような治療、診断から治療にやっていました。 森本:中本先生はそれまでは気血津液論とか、それから漢方はり治療は池田先生の理論だ、みたいなことをしっかり刷り込まれた世代だと思うんですけど、それと言ってみれば邪正論の時代になりましたよね。大阪はそういうものを勉強してますよね、この1年、2年近くか。もっと言えばあの時ですかね。前回の大阪の夏期研くらいからやっていますよね。その切り替えなんかは、中本先生は個人的にはどうされたんですか。 中本:切り替えはですね、そんなに今までやってきた事の方が好きだからというような、あまり執着って言うのはなくてですね、今、ここで勉強している事をやろとずっとしていましたので、難しくはなかったですね。 森本:はい、そうですか。山本先生。同じような質問をしたいんですけど、山本先生はどう言うような感じでやっていらっしゃいますか。臨床、ま、要するに診察しますよね。診察の論と治療論と言いますかね、そう言うのはどう言うように進めていらっしゃいますか。 山本:えっと中本先生と一緒で、少し前までは四十九難で顔色を診たりとか、そういうのでツボを決めてしていたんですけど、最近はやっぱり、先に脈を診る時に季節の脈を打っているかどうか、打っていなかったらとにかくその季節の脈になるように、心がけて治療しているのと、あとやっぱり、虚実を得に診るように最近はしていて、沈実の場合は鍼を立てて、気持ち的には上に引っ張るのを勢い良くと言うか、気持ち良く上に引っ張ると言うか、そういう気持ちでして、する時は迷いなくするような気持ですることを心がけています。 森本:要するに邪を抜くようなイメージを持ちながら、その手技をしていると言う事がおっしゃりたいんですか。 山本:はいそうです。 森本:はい、わかりました。中垣先生は、あ、そっちか。中垣先生はいかがでしょう。学校の勉強から大阪に来られて、それなりにギャップがあったかもしれませんけれど、その辺りはどう言う風に埋めていらっしゃいますか。 中垣:えっと、前は私は色を診るのがどっちか言うたら、深く診るのが得意で、そういう関係の仕事もしていましたので、もう入ってこられた時に大体ぱっと顔色を診て、大体予測をしていたんですけども、今も「あ、今日調子悪いな」とかはぱっと診ますけれども、邪気って言うものの認識が今、変わっていて、前は邪気って言うものが悪いとか怖いとかそういうものだったんですね。病気も悪いものとか、攻撃的なものとか、それの認識がちょっと今変わりまして、それによってこの陰陽調和の手法が理解ちょっとできるような感じです。 森本:はい、どうもありがとうございます。もう一人誰かおるかな。あ、中村先生。中村先生。 中村:治療ですか。 森本:サッカーでもええよ。 中村:サッカーの話は得意なんですけど、治療の事は頓珍漢なことが多いです。私はまず考え方としては、補瀉ですか? 森本:うん、補瀉ですね。 中村:補瀉、補瀉に関しては足りない所、気が足りない所に気を持って行くのが補で、実して気が溢れている所の気を取るのが瀉法と言う考えですね。 森本:なるほど。それは身体の中の考え方ですか。それとも例えばそのどう言うのかね、宇宙を、宇宙全体的に考えてそうされているのかどうなのか、どんな感じでしょう。 中村:基本的には、患者さんの身体の中で起こっているバランスを整えるつもりでしています。それで宇宙の気を中に入れるとか、そう言うこともあるんですけど、一時期そう言うのを意識してやってて、結構、疲れると言うか、そういう自分の中でそう言う感じがあったので、患者さんのバランスを整えるという、患者さんの中での事を意識しています。 森本:なるほど。患者さんを整えれば、当然患者さんは宇宙と対応できる力が付くやろ、とそう言うことも考えていらっしゃるんですか。 中村:そこまでは考えていなんですけど 森本:でもそうなるんでしょ、結果的に。なりません? 中村:分かりません。 森本:元気な人ってちゃんと、どう言うんですか季節の変化にも付いていけるでしょう。 中村:はい。 森本:と言うことは、そう言う二次的効果があると言うような考え方はできませんか? 中村:そうですね、そう言われると確かにそうだと思いますね。 森本:やっぱりカウンターと一緒ですね。一人の人じゃできない。はい。と言うことですね。じゃあもう少し本題に近づきたいと思いますけれど、営衛の手法とそれから陰陽調和の手法って言うものの使い方を、僕なりに先ほど説明させていただきましたけれど、じゃあ本田先生、戻りますけど、それは絶対的なものなんでしょうか、それとも別に例えば、気血津液論を陰陽調和の手法でも処理できるんでしょうか。それとも、それとか邪正論を営衛の手法で処理できるんでしょうか。その辺り、どうお考えでしょうか。 本田:僕は、大きく見るとできるんだと思うんですけど、 森本:大きく見ると言うのはどういう感じなんですか。その大きい内容をちょっと教えてください。 本田:季節とか宇宙ですね。の事を考えると、あの中村先生がおっしゃったことと関連があって、営衛の手法も陰陽調和の手法も、基本的には宇宙と季節と言うものの一体感の中でできるとは思うんですけど、僕自身は営衛の手法をやっていた時は、確実に身体の中の話でしか想像ができなかったんです。それで今回、陰陽調和の手法ということを考えたりする事によって、もっとですね自分と言うか患者さんの身体以上に、外の影響と言うものを考えるようになったと言うのがあります。 森本:基本的にはどうなんでしょう。中医学とか学校の勉強では、どっちかと言えば外よりも中の事を中心に習うんですかね。 本田:そうですね、中の身体の事の方を多く習うと思います。 森本:と言うことですか。 本田:あの、少しは季節と身体の関係って言うのは出てくるんですけど、僕が学生だったころはそこまで季節とか宇宙とか言うものを大事にして、これに身体を合わせて治療しましょうね、と言うようなことはなかったです。 森本:ああ、そうですか。他の方はどうですか。中垣先生なんかはどう言うような印象を持っておられますか。営衛の手法と陰陽調和の手法は、絶対的なものでしょうか。 中垣:結果的にはもの凄く変わりはないと思うんですけども、私は今、宇宙とか季節をすごく大事にしているんですね。で、それはまあ、宇宙とその周りに存在してるものが同じ構成されていると言うのが、ちょっと分かってきたのでそれを大事にしています。 森本:はいどうも。中本先生はどう。 中本:はい。結果的には、僕も良くなれば両方とも同じだと思っています。ただ、こっちの目的意識によって手法が変わったりとか、そう言うことは考え方とかですね、手法が変わることはあるのは当然ではないかなと思っています。 森本:そうですよね。結果的には、要するに治療家ってのは臨床家ってのは、患者さんを良くすれば良いだけの話ですからね。方法はどう言うんですかね、色々な方法があると。あの、よく漢方鍼医会の初めのころにね、小泉先生と言う方が会長で、よく本部でしゃべっておられたんですけど、富士山のてっぺんは1つだけど、要するに上る方向は色々な方向から登られると。ま、治療って言うのはそんなもんと違うか、と言うようなことをよく言っておられましたけど、そういうものなんでしょうね。要するに治せば良いと言うことなんですが、それを、より上手く治すか。例えば、東京に行くのに、鹿児島へまず行ってから東京に行くこともできますよね。それからアメリカに行ってから東京へ行くこともできますよね。だけど、大阪からだったらすんなりと東京へ行くこともできますよね。だから、すんなりとが良いのか、ぐるっと回って地球一周するくらいで東京へ行くのが良いのか、ぐらいな感じなんでしょうね。あの、合理的と言うことだけを考えるならば、大阪から東京へすんなりと行く。それも早く行きたかったら、飛行機で行く。ゆっくり行きたかったらあるいて行く。まあ、色々な方法があるんでしょうね。結果は一緒なんです。でも、方法論が色々あるというようなことなんでしょうね。大きく言えば、そう言うことです。山本先生、どうでしょう。その営衛の手法と陰陽調和の手法は、山本先生はどういうように使い分けたいと思っていらっしゃいますか。 山本:まだその、使い分けるほど、私は分からないんですけども、ただその、営衛の手法は迎随とかを考えなくて鍼を立てたら、どこでもと言うか立ててできると言うのは、私にしたら例えば、腎経の原穴なんかでも男性と女性では方向が違ってきますけども、立てるとそういう問題もないので、井穴とか金穴とかにも非常に便利だなと思っています。ただ、その虚実と言うのが、本田先生が東京でこの間、勉強されてきた押し返しがあるかないかと言うので、虚実を診分けるのも一つの手だとさっきおっしゃってたんですけども、他にもこれは実かなと思った時に、迷った時に何か決め手に他にあるんだったら、そう言うのも教えていただきたいなと今、思っています。 森本:と言うことなんですが、他に手立てがありますか、本田先生。 本田:虚実ですよね。脈でですか? 山本:脈でも何でも良いです。迷った時に、これは虚かな、実かなと迷った時に、私はこれで決めてとしていますと言うのがあれば、教えていただきたいです。 本田:僕はもうやっぱし、難経六十一難に書いてある、脈と言うものは虚実を診ていくものだ、と言うことを凄く大事にしていますんで、脈の虚実と言うものを大事にしています。ただ、硬い、柔らかいだけの虚実の脈だけではなくて、邪の多少とかありますよね。例えば、緩脈が凄く目立っている時は、柔らかいから虚と診がちなんだけれども、四十九難などで飲食労倦の邪と言うものが書かれていますから、柔らかい脈でも邪の影響を身体が受けたのではないかと診ていくようにしています。 森本:はい、どうも。他に、中村先生。どうでしょう、虚実の診分け方。これ、けっこう気になるところだと思うのですけど。先生ならどういうふうに。 中村:そうですね。虚実に関してですと、私の場合は、症状から入ることが結構多いのですけど、例えば、右の肩が痛いんだったら、大腸経ですね。その大腸経が実痛と虚痛の場合があると思うのですけど、そう言う所から入って、あと、六部定位脈診とか、脈診が軸になるのですけど、虚実を診て、底から症状に絡めていって最終的に全体的に虚実を考えるというか。 森本:ちょっと、その右肩の痛みに話を戻りますけどね、単に問診で虚実を聞いているのか、それとも触って聞くんですか、何をして虚実を弁別されるのですか。 中村:右の大腸経の場合であれば、例えば、触って症状があって痛みがあって、そこに筋緊張があったとしても虚痛の場合と実痛の場合があると思っているのですけど、例えば、大情だと、子午の関係だったらば、腎経が虚していたら、その大腸は実だとか、子午の関係だとか、相剋の関係だとかを踏まえて、虚なのか実なのかを捉えています。 森本:要するに腎経のツボを触る訳ですか。 中村:そうですね、ツボを触って。 森本:絡穴なんかを触るのですか。 中村:そうですね、例えば、尺中が虚していたとして、まぁ、腎経を触ってみて、尺中が充実してくる、その時に右の大腸経、右寸口部の浮いている所の状態を、また診て診たりとか、そう言う絡みで。 森本:要は子午治療されている、という事ですね。 中村:子午治療も入れていますし。 森本:とりあえず、今の考えだったら子午治療で虚実を決めておられる感じなんですか。子午診断みたいなもので虚実を決めておられるのですか。 中村:子午診断は、今は考えたりしていますし。 森本:そうですか。 中村:あと、季節も。例えば、夏だったら鈎脈が打っていたら、鈎脈が影響しているのかどうか、と言うのも診ます。 森本:中本先生はどうでしょう。虚実は、中本先生はどういうところで診ておられますか。 中本:虚実はやっぱり脈で診るように今はしています。今、季節の影響で脈は実になっているというふうに考えていくので、堅い脈が実だとか、軟らかい脈が虚だとか、という診方はないと思うのですよね。診方が違う治療法で合うかも知れないので、それはそれでよいと思うのですが、この診方では、今やっている治療法では、脈で季節の影響を探していくと、是が実であると考えてやっています。 森本:要するに季節の邪が入ったと。 中本:そうです。 森本:邪は実の反応をするだろうと。 中本:はい。 森本:という事で、それを探していると。 中本:そうです。 森本:そういうことですね。 中本:はい。 森本:中垣先生はどうですか。虚実に関しては。 中垣:私もほぼ中本先生と同じで、今は脈を診て、今だったら鈎脈が打っているかどうかによって、それを主に診ています。 森本:はい、わかりました。山本先生、質問、疑問がちょっとぐらい解けましたか。 山本:はい、また、家に帰って勉強したいと思います(M:いや、ここで勉強したらいいやん)ありがとうございます。 森本:はい、どうも。 山本:すみません、森本先生は。 森本:わしが言うの。虚実ですか。また、昼からでも。 山本:ありがとうございます。 森本:今、言うてしまうと、皆さんのグループディスカッションが盛り上がらないということになりますのでね、とにかく虚実をそういうふうに弁えて、あと、陰陽の調和の手法をする、と。という事が一つの方法ですね。営衛の手法に関しましては、どうでしょう、本田先生。本田先生も営衛の手法から入られましたよね。(H:はい)その時の虚実を営衛の手法の関係なんかは、どういうふうに本田先生は考えておられましたか。 本田:僕が入った時は、すべて精気の虚だったんです。その前に勉強したのは中医学で、中医学で勉強した時は、虚と実をけっこうきちんと分けていたんです。だから、脈でも分けていたし、中村先生が仰った症状でも分けていたんですけど、ここで僕が実だと、実ではないのですか?と言うと、実に診えるけど、身体の基本は精気の虚から始まっているから、営衛の手法を考えるのだったら、補法をしていくと。それで、補法した結果、実が取れていくんだよ、という事を教わりました。 森本:あの、ちょっと面白い話、一つだけしておきましょうかね。わし、文章を書くネタだからね、言いたくないんだけど、中国医学と日本漢方との虚実の違いってわかります。例えばですね、お腹が堅いとかしましょう、そしたら、日本漢方は、どこやらの蔵の虚で、こういう状態、停滞が起しているな、として虚と診る、中国の医学はね、どう診るのかと言うと、もう堅いものは実と診る。直接的なんです。という事はどうなるか、と言うと、同じものを触っていてもね、診察が真逆になる。こういう話知っていますか。そう言うものらしいですよ。僕もそれを聞いた時、非常に中国と日本の違いというか、面白さを感じたのですけどね。だから、堅いものを触ったら実、と言うのが中国。直接的でしょ。ところが日本の漢方医学は、ここは凝っている、堅い堅い、実際堅いけど、これは肺の虚だ、そういうふうにして全部虚から始まるんです。どっちが正しい、どっちが間違いかは別にどうでも良いんですよ。はっきり言って、どっちでもいいんですよ。結果が良ければ。先ほど言いましたように、結果が良ければ良いのですけど、でも、診方としては全然違うから、当然、論理の展開も違ってくる、手法も違ってくる、結果だけ、治ったという事だけは同じになる。だから、富士山を表から上がる人、それから裏の方から上がる人でも天辺は一緒ですよ。いうような所がね、違う所ですよ。面白い話と僕は思ったのですけどね。という事で、営衛の手法に関してちょっと宙ぶらりんにここで置いておきます。結論を出してしまったり、何かしてしまうと、これから30分間、皆さんグループディスカッションしていただきますけど、それが盛り上がりませんので、どんどん盛り上がる為に宙ぶらりん、混沌。なかなかいい空気じゃないのかな、と思いますので、では、とりあえず、パネルディスカッションを終ります。ご苦労様でした。 竹下:それではこれより、パネルディスカッションが終わりましたので、班ごとのグループディスカッションに移りたいと思います。今からパネラーが各班に戻りますので、班の中で、もう一度30分話し合って、またフロア全体のディスカッションといたします。それでは30分グループディスカッションを始めます。 森本:グループディスカッション終わりましたか。終りましたら、何班まであるのかな、1班、(竹下:4班まで)4班まであるんですか、(竹下:あと学生班も)はい、班長さん、まず、1班の班長さんからお願いできますか。 竹下:はい、1班の班長の竹下です。営衛の手法と陰陽調和の手法の違い、と言うのを先ずお聞きしていったのですけども、使い方、使い分けもそうですね、使い方について、やっぱり理論として、まだしっかり定着していないという意見もあって、使いにくいというよりも、どのように使っていこうか、というような形であったりとか、治療論だったり、手法も違うわけなのですけど、営衛の手法との使い分けというのを、必ずこれといった形で使い分けをしたらよい、という明確な理由が出てきにくかったような、そんな意見が少し出ました。 森本:これに関して他の方はどう思われますか。そんなに使いにくいものなのでしょうか、使いやすいものなのでしょうか。これ意見を聴きたいのですけど。僕は使いやすいと思っていますからね。使いにくいという方の意見をお聴きしたいのですが。どうでしょう。我こそは使いにくい。はい、1班の誰が言ったのですか。別に血祭りにあげるつもりはないから。 竹下:岩本先生、じゃ、ちょっとお聞きして良いですか。 岩本:使いにくとか、使いやすいとかいう前に、私自身勉強不足で本質が分かっていないので、もうちょっとよく勉強します。 森本:反省ですね。はい、わかりました。次、いきましょう。他はないですか。これは分かりにくい、と思っておられる方。ないですか。どうぞ。山崎先生。 竹下:山崎先生、お願いします。 森本:要するに分かりにくい派やね。 山崎:はい、わかりにくい派です。 森本:はい、どうぞ。 山崎:血祭りコースになるそうです。 森本:あははは、だれや、そんなこと言ったのは。 山崎:えっと、営衛の手法でずっときたのですよね、(M:そうですね)私はずっと今もこれからも変える気もさらさらないのですよね、それで、ただ、考え方として、邪に着目しようと、考え方として、正しい気の正気ね、米へんに青いの精気は、今、ここに持ってくるとややこしいと思うので、正しい正気と邪気はあるだろうと思うのだけど、営衛の手法だけでやるのは、正気を補う事ばっかりや、と言っていますよね、それとは違うんだ、と。違う考え方で邪を処理するだ、という言い方だけど、僕の頭の中ではおんなじ、全く同じに聞こえる。 森本:どういうふうに全く同じに聞こえるのですか。 山崎:治療かとしては、陰陽を、ここでも話ししたけれど、免許取った日から、東洋医学の基本がわかっていたとしたら、本日ただいままで、ずっと陰陽調和を目標に、偉そうに言わしてもらったら、いう事やと思うのです。だから、全部陰陽調和。まず、ネーミングの話から行くと、全部が陰陽調和であると思うのです。まずね。 M:そもそも論はみんな一緒なんですよ。そんなもの一緒ですよ。(山崎:ね、ね)ただね、ただ、なんでこう言うようにしたかと言ったら、邪論という事をするには、営衛の手法だけでは不十分じゃないんだろうか、という事と、それから先ほども言いましたけど、経絡の流れが、僕たちが習った方向とはちょっと違う方向流れもあるんじゃないだろうか、と。言うようなこともあったり、それからもう一つは、3年ぐらい前ですかね、残って勉強されていた方が、経絡を撫でて、流れに合わせて撫でたら良かった場合と、流れとは逆の方向に撫でたら良かった場合と、色々出て来たんですよ。そうなってくると、その矛盾を要するに、ちょっとでもね、和らげてあげる方法があるとしたら、こういう方法ちゃうかな、と思ってるだけなんですよ。 山崎:だけなんですよ(M:だけなんです)それ以上でもそれ以下でもないですよね。 森本:いや、それ以上かもしれんね。(山崎:それ以上)以下ではない。(山崎:以下では絶対ない)それ以上の事は当然あるんですよ。でも、そういうような、たぶんね、皆さんが心の中に矛盾を抱えるよりは、少しは、その矛盾が解けた方が、こういう勉強会としては意味があるんちゃうのか、と思っているだけです。(山崎:えぇ)黙っていて、僕が皆さんに教えないのも勝手、自由なんですよ。(山崎:えぇ)だから、山崎先生が余計なことを言うてくれるな、という話なんでしょ、今の理屈から言ったら。 山崎:そうです。その通りです。 森本:ややしことをいうからね、俺の頭の中はぐちゃぐちゃになるやろ。(山崎:そうです。そうです、その通りです)だからね、男って言うのはね、男とちゃうわ、いうたらあかんか、人間と言うのは、物をだんだん考えなくなっていくのですよ。年をいったら。新しいものは入りにくくなるのでしょうね。 山崎:新しいというのか、先生が特別変わって新しいことを言っているようには、まったく思っていないです。 森本:当然そうですけど、ただね、邪論というものをやるって、大阪漢方は総会で皆さん一応承認しましたよね、承認したという事は、そういう方向で何かいい方法をね、探すのがやっぱり会員としての使命じゃないかと思っているのですよ。だから、臨床はいいですよ、山崎先生がね、家で何をされようと、それは構いません。ただ、ここで何か高めていくことのきっかけに、こういうものを出しているんです。山崎先生は、もうそんなものめんどくさい、俺の頭をね、もうややこしいことするなと、俺はこれでもう飯が食えているんだと。言うのは、それはそれでいいんですよ。でも、飯を食えていない人の為に頑張らなあかんのですよ。僕たちは。 山崎:もちろんそうです。そのために営衛の手法で徹底的にわかりやすくしていくことの方がスムースではないかな、思う。 森本:だから、矛盾が出てきたから、と言いましたよね。(山崎:ええ)営衛の手法で十分でないものが出てきたから、これを改善する方法、もっといい方法がないかな、というだけのことなんです。営衛の手法がすべてだったら、それはそれでいいんですよ。(山崎:うん)だけど、研究する、この会は研究する会ですよね、その中で、色んなものがわかってきますやん。今までわかってこなかったこと。例えば、難経なんかでもね、実際には循環説だけで書いていないんですよ。例えば、23難なんか読まれたら分かると思うけれど、あれは求心説ちゃうか、というようなね、(山崎:ええ)ことなんですよ。わかります。 山崎:意味わかります。 森本:意味わかったら、僕の言うことは分かるはずです。(山崎:えぇ)ええって、本当にわかっているの。 山崎:いやいやだから、具体的な事では、わかります。理論の難しいことはわからないけど、要するに流注の話が陽経は問題ないけど、陰経では逆やないかと、実際の治療では鳴ると思うのやけど、求心性であることであれば、陰経も陽経も全部心臓の方めがけて流注やないかと、今、わかります、と言ったのはそう言う意味です。 森本:うん、だから、そういうものを要するにね、臨床にも使えるようにするのが、会員のやっぱり使命じゃないんですか。僕はそう思っているんです。 山崎:だから、そういう意味で言えば、営衛の手法を、76難のどこにも、あの76難だけを言えば、流注に従って鍼を寝かせなさい、流注に従って営の時でも鍼を傾けなさい、と書いていないですよね。 森本:書いていないですよね。 山崎:だから、衛に従って、衛を意識してというのか、営を意識して衛を意識して、鍼をしましょう、と言うのが書いてありますけど、それに流注をからめてしまうと、矛盾が起こるのだったら、次の手を考えませんか、と言う意味で、営衛の手法を深めていけば良いんじゃないのか、と思うのですけど、いかがでしょうか。 森本:それは深めるのも一つの方法、そこは山崎先生が研究してもらったらいいんですよ。だけどね、名古屋も去年出しましたし、大阪も来年その方向で行くという事が一応、皆さん、まだ決まっていないのかな、今日、臨時総会やるの、たぶんそこで決目られるんでしょうけれども、そう言う方向だったら、そういう方向の勉強したらどうですか、というだけのことです。(山崎:ええ)だから、大いに76難を深めて頂いてかまわんのですよ。全然、深めていないんですよ。1999年(山崎:平成11年)平成11年の(山崎:6月)6月やね。その時、わしが発表したね。それから、じゃ何が変わったのかと言うと(山崎:何も変わっていない)何も変わっていない。(山崎:それなら読めよ私も言いたい)だれも勉強、研究していないのですよ。(山崎:そうそう)だから、そっちの方が問題なんですよ。 山崎:何も研究せんといてね、何でも他の事を言いだすんや、と言いたい。 森本:いや、他の事ではなくて、結局邪論をやりだしたら、邪をどういうふうに処理できるのか、と言うのがイメージしやすいでしょう、という事だけなんです。営衛の手法というよりも、陰陽調和というのは名前が良いのかどうか知りませんけど、要するに、瀉法とはっきり言っているのですよ。だから、邪を処理しやすいのではないかな、というだけの事なんです。 山崎:あの、要するに賑やかな邪の方が、姿かたちが賑やかで、ターゲットにしやすいとうことでしょう。 森本:まぁ、そういう事も言えます。あなたは、だいたい精気論の信奉者ですからね。(山崎:ええ)だから、当然、邪は嫌いですよね。 山崎:邪のお陰で、脈が診易くなったという事は、ここでも発表させていただきましたから、全然、邪のお陰さんで飯が食えるように一段となっていますから。邪さんのこと好きですよ。(フロア:あはは) 森本:だから邪さんのこと好きやったら、陰陽調和の手法もね、ある程度ね、勉強していただいたらどうでしょうか、という提案なんですよ。 山崎:でも、陰陽調和の手法が名古屋で発表しているのと、森本先生が言われているのと、この間の何、隅田先生、東京の、隅田先生の発表とちょっと違うでしょ、内容が。 森本:部分的には、基本論が違うからね。(山崎:そうでしょ)あの人らは、あの人らって、あの方々は、たぶんね精気論を基本にしてやっておられるのですね。 山崎:森本先生のは陰陽論を基本にしているでしょ。 森本:僕は陰陽論ですけど、大きな陰陽論ですよ、身体の中だけの陰陽論だけじゃないですよ。 山崎:もちろん、根本、基本論が陰陽論。 森本:そんなん、陰陽無くして東洋医学なんてないですやん。 山崎:そうやのに、精気論だけでなんとか、邪論を片付けようとしている人たちと同じネーミングと言うのは僕は。 森本:ネーミングには問題があるかもしれませんけれど、でも、宇宙との調和とか、結果は調和でしょ、陰陽が調和することが治療の大目的でしょ。 山崎:それは森本先生の陰陽調和の手法の前提の基本だと思うんです。 森本:じゃ、山崎先生は違うんですか。 山崎:いやいや、そうじゃなしに、違いますよ、名古屋の人とか、東京の人は、どうもそうではなさそうだと僕は感じるんですが、先生どうですか。 森本:それは、たぶんね、それは小宇宙で言っておられるか、大宇宙まで相手して物を言っているのかの差だと。 山崎:そうでしょ、だけど、その前提が違うのにネーミング同じって、聞いている理解できないモノにとっては。 森本:ただ、それをね、応用すればいい事だけであって、僕らは天人合一論って習ってますよね、(山崎:ええ)だから、それを伸び縮みさせれば良いだけの話なんですよ。だから、そんなことにこだわる山崎先生の方が肝っ玉が小さすぎるような感じがします。 山崎:という話になるんやね。 森本:あまり人にレッテル貼ったらね、議論が終わってしまうからね、やりたくはないのだけれど、そういうことになるんですよ。もう少しワールドワイドに物を考えて頂くと、両方意味がある事が分かっていただけるのではないかと。皆さん、笑っているけど、楽しい、こんなん聞いていて。 山崎:あんまりしてたら、大事な時間を。 竹下:はい、次に行きますね。2班の班からも意見があったと思いますので、海老原先生ですね、班長は。何かありましたら、お願いします。 海老原:2班の海老原です。今、山崎先生が仰っていたことの同じだったのかな、と思うのですが、上手く説明できないかもしれないですけど、先月に引き続きですけど、営衛の手法と陰陽調和の手法とをとにかく分けるという事が、急に何、と私は思っていて、皆さん、両者を分かっているし、臨床上は、皆さん自分たちなりに利用、使っているとは思うのですけど、これを明確に分けて、綺麗に分けて使っているのではないのかな、と先月から引き続き思っていたのですが、今、森本先生の説明を聞いて、今まで営衛の手法でできることをやっていて、その上、足りない点が出てきたという事で、精度を上げるとか、合理性を高めるとか、そう言ったことの為に陰陽調和の手法を、なんて言うのかな、名古屋のヤツなので、ブラッシュアップって言ったらだめなのですけど、これからも、変化、いい意味で変えていくのが必要なんだな、今、森本先生の説明でわかりましたので、なんで分けるんや、というのはやめようと思いました。 森本:それで止まってたら文句言っているところや(海老原:あははは)誰が言うたんや。 海老原:もう一個は、山崎先生が言っていましたけど、陰陽調和の手法が私は名古屋のもの、発案だと思っていて、あれを考えていて、陰陽を調和させるという意味では、多い方から少ない方へ移動をさせるという意味をやっぱり考えていたので、1番から11番に出て来る4番に出て来る、陰陽調和の手法は瀉法が基本にある、サンズイのある瀉法は基本になります。と書かれてしまうと、取ってしまうになるから、あの陰陽調和の手法と、この取ってしまう陰陽調和の手法は違うのだろうか、みたいなことになって、さっき、中本先生にも質問させていただいたのですけど、それはもう別のものだ、と仰っていたので、別のものだったら、一緒に入ったらあかんのちゃうか、と私はうっすら思って、なので、名古屋が言うものと、大阪がが言うものが違うので会ったら、その差であったりとか、呼び方、皆が分かり易くするとかで、私の脳みその中ではそうしてもらえると助かるかな、というのに収まりました。 森本:先ほど、言いましたけどね、小宇宙でモノを考えている陰陽の調和の手法と、それから大宇宙、季節やら宇宙の営みを相手にしながら、なおかつ体の中もそれで予測しながら治療していくというのは、確かに範囲が違うんですよ。言っていることが。要するに名古屋や東京が言っておられるのは、もう体の中の事は身体の中の事で収めたいと、僕はこれはこれで良いんです。いいけれどその代わり、 要するに日本の中の政治が良かったら、よその国がひっくり返ってもいいのかな、と同じ話になってしまうんですよね。 それっていいですか、という話なんですね。 だからやっぱり海老原先生なんかは、 よそを助けに行きたいという気持ちがある先生なんですよね。そういう先生ということは結局、 自分の家だけが幸せであったら、よその家なんかがひっくり返ってもいいのではないか、という考え方は多分されないんだと。そういうものと同じ考えだと思ってください。 だから宇宙を意識しながら、大宇宙を意識しながら小宇宙も見ると言うような、スケールのある鍼灸家に、皆さんなって欲しいな、と僕は個人的には思っています。 海老原:陰陽調和の手法は大阪的みたいな感じで。 森本:だから、要するに瀉法を難で書いたか、と言いましたらね、要するに、どういうんですか、もし、抜くとしたら、季節なんかの邪が入ったとしたら、それは抜くことによって、体も良くなるし、 それから体の、逆に言えばですね、季節のエネルギーが逆に吸い取ってるということになるんですよ、 じゃあ季節に返してあげたらいいわけですよ、 じゃ、調和ですね。よろしいでしょうか。(海老原:はい)調和と言うのは、体の中だけの調和とは違いますよ、 だから海老原先生だけが体の調子が良くても、わしが体の調子が悪かったら調和にはならんのですよ本当は。 (海老原:はい)ちょっとわかった。 海老原:先生のおっしゃってることはすごくよく分かるんですが(M:わしの言う事よくわかるやろ)もし、もともとパワー少なめの人、身体の中に100力がなかったとして、めちゃくちゃ実とか、それを取って捨てるのか、と言われたら、捨てたら死んでしまうんちゃうのか、大げさに言ったらですけど。 森本:そういう考え方もあるけどね、弱ってる人にはね何かが邪魔して弱っている可能性があるんですよ。 (海老原:はい)単に足らんことばかりを言うんだけれども、 足りない理屈が何かあるんでしょ、だから 足りないのでしょ、ということまで考えれば、んやとってあげることも大切なことではないんですか。 その現状ばかり言うよりも 現状の前には原因があるんですよ。 分かります。 海老原: 例えば、風邪引いて、引き立てのホヤホヤだったら、入ったやつを取ればいいですけど、 (M:そうそう)時間経ってしまったら、中に入ってしまうってなったら。 森本:それでもとってあげたらいい。それでも取ってあげるのも一つ。それから 両方から考えてね、精気が好きな人はそれを補ってあげるのも一つ、ただ先月の言いましたけれどもね、 例えば精気をを補ったが為にですね、 逆に咳がたくさん出て体が弱ったって言うことがありませんか。あってもいいんです、無かってもいいです。 腰痛を取ってあげようと思って、 とってあげたら後で立てないようになった、そういうことないですか、なかったらなかったでいいです。そういうものなんですよ。 やることがうまくいっていなかったら、 なんぼしてあげてもダメ。というのも現実だと思いますよ治療というのは。 もう少し陰陽両方を考えて。 海老原:ありがとうございます。 竹下:ひとまず2班の話はこれで終わりにします。 あと残り時間5分ぐらいしかないのですけど、3班の片岡先生お願いいたします。 森本:簡単にいこう。 片岡:山崎先生がほとんど行ってくれはったんで簡単に。今、海老原先生の話を聞いていて思ったことが、 去年名古屋の夏期研で 陰陽調和の手法が言われて、大阪が大宇宙を考えて陰陽調和の手法を考えてやっていることなんですけれども、ちょっとネーミングを変えないと、同じ陰陽調和の手法を言ったときに、大阪の中でも、その体内だけで考えている人、宇宙の考えてやる人、 別れたりとかして 、今の話で皆さんわかったと思うんですけど、 多分夏期研でやる場合に、 混乱すると言うか伝わりにくさと言うか、あると思うので、何かそういう工夫は必要なのかなあと思いました。 森本:じゃ、どんなネーミングが良いですか。 片岡:何でも良いです。 森本:何でもいいではわからん。 片岡:何でも良いですけけど、陰陽調和の手法(大宇宙)でも。そこまで考えているというのが伝わるとか、 説明とかにおいて違いを。 森本:でも、季節季節言うたら、そういうものちゃうかな、と僕なんかは思うけどね。 片岡:僕もそう思います。(M:ねぇ) 森本:なんでやろうね、季節と言っても体の中しか考えないのかね。まぁ、いいわ。それだけですか。(片岡:はい、以上です)はい、4班。 竹下:4班、江田先生、お願いします。 江田:4班の江田です。ほぼほぼ同じ話で盛り上がったと言うか、 ほぼほぼ今までの話で解決しているので、あまり付け足すことはないのですけれども、 最後、片岡先生がおっしゃったみたいに、やっぱりネーミングでちょっと 間違った理解をしていたのは多かったので、 他にアピールする時に片岡先生が言ったみたいに(大宇宙) とか、僕、太極拳をやっているので、その流れで言うと、小周天と大周天という考え方があって、 そういうなんかちょっと、 違うということを言っていただいた方が 理解は初めて聞く人にはやりやすいのかなと思いました。以上です。 森本:ありがとうございました。 何か考えますゲーミングを。 年寄りに考えさせるな。 竹下:ありがとうございます。ネーミングの話が色々出ましたけれども、大阪のね、森本先生が提出された陰陽調和というのは、今日お話しした使い方の通り、という事です。それでは、あと1分。すみません、学生班からも意見を求めたいのですが。ないですか。 藤田:用語の説明などをやりました。 竹下:わかりました。ありがとうございます。ですから1分ほど早いのですけど お昼に入りたいと思います。 これで午前の部は終わります。これからお昼休憩に入るのですけど、 ランチョンセミナーを12時10分からスタートします。 夏期研のプレ発表ということで 「切診と脈状」僕、竹下の方からお話しさせていただきます。お弁当など食べながら 団らんして聞いていただければと思いますし、 特に必要はないと思えば 外にご飯を食べに行っていただいても結構です。午後の部は今日は臨時総会を始めますので、少し早めのスタートになるのでお昼が短くなる先生がいらっしゃいます 。ここ会員の先生は 12時45分に臨時総会始めたいと思いますので12時45分前にはここの部屋に 南館の72合室に戻られるようにしてください。学生班の先生と言うか学生さん達は、3時限目は1時15分からになります。1時15分に戻られるようにお願いします。それではお昼に入ります。森本先生ありがとうございました 。 おわり